視点が景色を変え、景色が世界を変えた。

　人がなにかを表現しようとするとき、どんな技法や媒体を用いるかを考えるより重要なことは、どのような視点でその対象を見つめるか、ということにあるでしょう。自らの視点を持ち、そこからじっと見つめることで立ち現れる景色があります。
　その景色は、実際には存在しません。けれども、強くて大きな意味を持っています。あなたの見る世界を一変させてしまうほどに。
　この展示会では、6人の作家がそれぞれの視点から見た景色のありようを見せてくれるでしょう。それらを鑑賞することを通して、鑑賞者は作家の視点を追体験し、それと同時に鑑賞者自らの視点を明らかにしていきます。

　きわめて抽象的なコンセプトを持つ今回の展示会は、ともすると作家どうしの一貫性がなく、まとまりのない印象になりかねません。そこで今回は、各作品が構想の段階からそれぞれの作品が同じ空間に配置され、一つの展示会を構成することを前提に制作されています。作品が相互に関連づけられていたり、展示会全体の中で果たす役割があらかじめ決められていたりすることが特徴です。
いくつかの作品を包みこんだ展示会もまた、一つの作品として楽しむことができるでしょう。
　この展示会を訪れた人がそれぞれの作家の視点を、またそこから見える景色が融け合い調和する空間を、存分に味わってくれることを私たちは願っています。